盛政は10歳の時に、佐久間家のルーツを学んだ。
それ以来、桓武天皇の血筋を、脈々と受け継ぐ、名門武家に生まれたことに誇りを持ち、織田家で出世街道を驀進する原動力としてきた。
やがて、「織田軍に、佐久間盛政あり」と言われるようになった。
佐久間の名を、世の中に知らしめることが、祖先へ光が当たることに繋がり、最大の供養にも繋がる、と思っていた。
だが、本音では、一向一揆勢力との宗教戦争ではなく、武将同士の純粋な戦をしたかった。
武門の家に生まれた男にとって、それが、最高の誉れであるからだ。
しかし、時代は、それを許してくれなかった。
武士の権威は、地に落ち、その弱みにつけ込んだ本願寺は、百姓や町人を洗脳し、武装集団に変え、昼夜を問わず、ゲリラ戦を、全国各地で、展開してきた。
盛政は、武士の体たらくが、歯痒かった。
地に落ちた権威を高め、再び武士が治める世の中を、取り戻したかった。
信長の想いも、盛政と全く同じであった。
信長は、盛政の最大の理解者だった。
盛政は、百姓や町人らに、常々、感謝していた。
彼ら、民衆が、武士を支えてくれていたからだ。
民衆を洗脳し、暴徒化させた本願寺が許せなかった。
だからこそ、此度の戦で、本願寺に加担する勢力を、尾山御坊もろとも、徹底的に、叩きのめした。
だが、そんな時代も、もうすぐ終わりを迎える!!
お館様(信長様)を中心に、強い武士の世の中が甦るのだ!!
盛政は、「天下布武」の世に、想いを馳せていた。
「あと少しだ!! あと少しで、お館様(信長様)と我の理想とする世の中に手が届く!!」
「まずは、我が、先頭に立ち、この国を変えて行かねばならぬな!!」
盛政は、決意を新たにしていた。
日本海を照り返す夕日は、丘を一層輝かせていた。
その黄金色に輝く丘で、盛政は、溢れんばかりの夢と希望を抱いていた。
夕日に照らされた尾山御坊は、解体工事が、急ピッチで進んでいた。
盛政は、この砦址に、金沢城を築城し、加賀の国主としての、第一歩を歩み始めた。
金沢城主 佐久間盛政の誕生である。
第1部 夢見丘 完